グループホームで介護員をしていました。軽度の認知症の方で一度言い出されたら、絶対といっていい程、ご自分の意見を曲げない方がおられました。
通常は介護員のお手伝いをしてくださり、冗談も分かってくださり、とてもこちら側サイドとしては、問題のない入居者様です。ところがある日、何が切っ掛けだったのか分かりませんが、急に入浴拒否をされる様になりました。
介護員が何と説得しようが、首を立てに振っては頂けません。一度言ったら通す方です。
責任者に私は呼ばれて頼まれました。「何とかしてよ。もう10日も入られてないのよ」その入居者様と私は、ある程度信頼関係がありました。だから責任者も私を呼んだのでしょう。
ある介護員が先に説得に掛っていました。「ダメなのよ、私は風邪引いているんだから、お風呂はダメなの!」私はこれだ! と思いつき彼女に近づきました。
「Sさん、風邪引かれてますね」「そうよ」
「私、今、内科の先生に電話してきました」「……」
「確かに、風邪の時はお風呂はいけないと、Sさんがおっしゃった様に先生もおっしゃいました」「でしょう、ほらね」
「はい、たしかにそうなんですが、S様はそれでもお元気なので、特別ほんの少しだけなら入っていいとの事でした。よかったですねぇ~」
S様は、あらそうなのと、ツキモノが落ちたように浴室へ向かわれました。その時、私はまず『受け入れる』その大切さをしみじみ実感しました。