祖母の介護を負担に感じてしまった祖父

義母が「要支援2」になって以来、この家はおかしくなっていくばかりでした。
やがて義母が「要介護1」になってしまい、「足が痛くて歩けない」「リハビリはきつい」とのことで、地元の役場に紹介してもらったデイサービスは「家ででもできるから」と義父の応援もあり、やめてしまいました。

その後、さいわいなことに数年間は「要介護1」を保っていたのですが、このころから
冬に湯たんぽを使う義母が危なっかしくて、私がお湯の準備をしていたのを思い出します。

ふと、何を思ったのか、ある時義母が何やらコンロに乗せていて……確認してみて驚きました。非力な義母は、湯たんぽにお湯を注ぐことができないから、水を入れて直接コンロで熱していたようです。

同時期に失禁も始まり、布団の洗濯をしようと押入れを除くと、たいてい汚物つきの下着が隠れていました。

義母はもちろんのこと、義父も夫も掃除ができないので、ただただ早くこの汚物を片付けたい一心で汚れ物の始末をしていたのですが。

今年の1月に、粗相をした義母の姿を同室の義父が見つけてしまい、パニックの末に電話で親族を呼び集めて
「俺はもうこの人の面倒は見きらん!」と勝手に義母を病院送りにしてしまいました。

実は偶然まったく同じ日に、別の病院に相談に行くつもりで調べ物をしていて、夫は夜勤明けで眠っていたのですが親戚の女性の一人が「この家に主婦はおらん」と勝手に決めつけて、義母の入院生活が突然始まってしまいました。

他界してしまいましたが、毎日義母に会いに自転車で病院へと向かう義父のことを、少しだけ尊敬しておりました。

が。見舞いの様子が双方とても不機嫌で、「義父さんも介護認定を受けてみたらどうですか」と進めていただき結果、「要支援1」でした。

「退院したらデイケアを続けようね」「お義母さんは、よく元気がなくなって休んでしまうからお義父さんが一緒に付き添ってね」などと口々に言われていた義父でしたが、入院中に「要介護3」となってますます体力の落ちてしまった義母を見て施設通いがいいことなのかどうかを疑うようになってきたようです。

そして、8月某日のことでした。
施設の方には何の責任もないのですが、どうしても義父だけが施設に行くのを拒み、挙句の果てには義母に対して
「お前はもう帰ってくるな!」と暴言を投げかけ、騒動を耳にした近所の奥様にさんざん愚痴をこぼして、物置小屋の梁に縄をかけて縊死してしまいました。

お葬式が終わっても、四十九日が終わっても、なぜか義母は義父の夢を見るのだそうです。
一方、義父は義母のことを最後の最後にどう思ったのかな、とごくたまにそんなことを考えながら仏壇にお花を供える毎日です。