息子が誰だか分からなくなり・・・

私は認知症の方が多く入所する介護施設(有料老人ホーム、特別養護老人ホーム)に勤務している看護師です。
その中で印象に残った認知症の方について書きたいと思います。

80代の女性のAさんという方には息子さんが一人いらっしゃいました。
はじめの頃は息子さんの顔と名前が一致し、面会の度ににっこりされ大変喜んでおられたのですが
少しずつ息子さんという認識が困難になってきました。

「弟よ」と言ったり「主人よ」と言ったり、最後には「知らない人」になってしまいました。

Aさんは食べることが大好きな人でした。
普段は穏やかな人でしたが食べ物(特に甘いもの)に関しては
他人のものを取ったり、それは違うと話すと顔を真っ赤にして怒ったり。

でも認知症になっていろいろなことが理解できなくなってきても、なってくるからなのか
その方の性格や考え方や、どんな風に人に接してきたか・・・そんなことが
強調されるような気がするんです。

Aさんはいつもにこにこして、食べることに関して怒ったり、職員に手が出たりすることもあったけど
とても愛されキャラでした。憎めない人でした。

私も例え認知症になってもみんなに「かわいい」って言ってもらいたいです。
Aさんは施設で最期を迎えられました。
とても可愛がっておられた息子さんに見送られてとっても幸せな人だったと思います。